何かとノイズに悩まされるストラトキャスター。
ではなぜストラトキャスターはノイズが起こりやすいのでしょうか。
この記事ではストラトキャスター特有のノイズの原因、ストラトのノイズ対策を解説しています。
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ストラトはなぜノイズが起こりやすい?
ストラトはなぜノイズが起こりやすい?
レスポールと人気を2分するストラトキャスター(以下、ストラトと略します)ですが、ストラトユーザーの多くは、ノイズに悩まされているのではないでしょうか?
音の入り口であるピックアップから、スイッチ、ボリューム、ジャックなどの電気系統以外に、ストラトの最大の武器であるトレモロユニットもノイズの要因となるのです。 ここでは、ストラト特有のノイズと、それらの解決方法について考えていきたいと思います
ストラトに発生するノイズの原因
ピックアップの構造
ノーマルのストラトがノイズに弱いと言われる最大のポイントは、ピックアップの構造が原因です。
そのメカニズムを知るために、最初にピックアップの仕組みからお話しします。
ピックアップとノイズ
ピックアップは、ポールピースと呼ばれる棒状の磁石に細い銅線をコイル状にグルグルと巻き付けた構造になっています。
コイルと磁石で作られた磁界の中で、電気を通すもの(エレキギターの弦)が動くことで、電気が発生してギターの出力になるのです。
このように、ピックアップは磁力の変化によって音を拾う構造になっているので、ピックアップは弦の振動以外に磁気的なノイズも拾ってしまうのです。
ここから先は、ストラトのノイズと話は反れますが、ノイズ対策という意味で外せない内容なので、少々、お付き合いください。
シングルコイルとハムバッキング
ストラトとレスポールを比較すると、レスポールの方が音が大きくて、ノイズが乗りにくいという特徴があります。
これは、それぞれに搭載されているピックアップの違いによるものです。
ストラトのピックアップは『シングルコイル』と呼ばれていますが、レスポールのピックアップはシングルコイルを2個並べた形状の『ハムバッキング』と呼ばれるタイプのピックアップです。
ハムバッキング・ピックアップは、文字通り『ハム(ハムノイズ)』を『バッキング(後退させる)』という意味があり、シングルコイルよりもノイズに対して有利な設計になっているのです。
位相~正相と逆相
ちょっと話は反れますが、エレキギターはピックアップで弦の音を交流の電気信号に替えて、ギターのアウトジャックへ出力します。
2つ以上のピックアップで音を拾う際に、それぞれの『位相(いそう)』(交流のプラス、マイナスのタイミング)が合っている状態を『正相(せいそう)』と言い、逆に片方のピックアップがプラスの時、もう片方がマイナスの交流が流れている状態を『逆相(ぎゃくそう)』と言います。
正相同士の信号を混ぜる(同時に鳴らす)と「足し算」になりますが、逆相の信号を混ぜると「引き算」になります。
ハムバッキング・ピックアップの仕組み
ハムバッキング・ピックアップがシングルに比べて音が大きく、ノイズが少ないのはなぜか?について説明しましょう。
例えば、シングルコイルが以下の音を拾ったとします。
ギターの音:10
ノイズ:5
一方で、ハムバッキング・ピックアップは、片側のピックアップが正相、もう一つのピックアップが逆相(極性と巻き方が逆)になっています。
このため、ギターの音が正相、ノイズが逆相になる仕組みになっているのです。
ギターの音(正相)10+10=20 → ギターの音量は2倍
ノイズ(逆相) 5-5=0 → ノイズが消える
いかがでしょうか?
シングルとハムバッキングの違いは、ご理解いただけましたか?
ちなみに、コイルの巻き数が多くなるほど、拾える音は太くなっていきます。 レスポールの音がストラトよりも太いのは、コイル2個分の巻き数があるからです
ピックアップが原因のノイズとその対策
対策1:ハムバッキング・ピックアップに交換する
一番有効な方法は、ストラト最大の弱点であるシングルコイルをハムバッキングに交換することです。
そうは言っても、愛器のボディーを加工するのは嫌でしょうから、DIMARZIO(ディマジオ)やSEYMOUR DUNCAN(セイモア・ダンカン)などのメーカーから販売されているシングルサイズのハムバッキング・ピックアップをチョイスすることをおすすめします。
税込みで1万円前後なので、コンパクトエフェクター並みの価格で買えますよ。
しかし、シングルサイズでも、これらはハムバッキング・ピックアップなので、本来のストラトの音がしなくなります。
ハムバッキング特有の、太くてパワーのあるサウンドになってしまいますから、よりパワフルなハードロックサウンドが欲しい人にはおすすめの改造です。
逆に、ストラトの音を失いたくない人は、次の方法をおすすめします。
対策2:ノイズレス・ピックアップに交換する
フェンダー社から販売されている『ノイズレス』シリーズのピックアップをチョイスすれば、ストラトのサウンドをそのままに、ノイズ対策ができます。
ただし、ポッドを250kΩから500kΩへコンデンサーを0.047μFから0.22μFへ交換しないと、本来の良さはでないそうです。
こちらは、3個セットの販売で、価格は2万円前後なので、ディマジオやダンカンよりもリーズナブルです。
対策3:センターを逆磁ピックアップにする
ハムバッキング・ピックアップは正相と逆相の2つのピックアップを直列に接続しています。
これに対して、ストラトのハーフトーンは並列です。
直列接続と並列接続の違いは、直列の場合は音量が大きくなりますが、並列は音量が変わらないということです。
しかし、2つのピックアップが同時になるわけですから、どちらかのピックアップが逆相(逆磁逆巻き)になっていれば、ハムバッキング効果が得られます。
又、フェンダーのノーマルなストラトにもセンター逆磁仕様のものがありますが、3個のピックアップが正相のものもあるので、音で確認するしかありません。
ハーフトーンにしても「ジー」というノイズが消えない場合は、センターも同位相なので、ハムバッキング効果はありません。
ピックアップを買い替える際にセンターが逆磁かどうかを確認する方法は、センターピックアップの配線の色がフロントやリアと違っていれば、逆磁ということです。
センター逆磁のピックアップセットは、安価で販売されているものも多いですし、ストラト本来の音を壊すこともありませんので、おすすめのノイズ対策です。
ただし、ハーフトーンでなければ、ノイズ対策にはならないのが難点です。
対策4:ピックアップのシールディング
ピックアップカバーを外して、コイルに銅箔テープを巻き付け、アース線へ配線することで、ピックアップをシールドすることができます。
銅箔テープはネット通販で千円前後で販売されており、一番安価なノイズ対策ですが、それなりに効果がある有効な方法です。
ストラトに発生するノイズの原因
原因1:ピックアップセレクター
ストラトのピックアップセレクターは、比較的接触不良を起こしやすく、ガリノイズが出やすいパーツです。
特に、モールドされていないタイプのスイッチは接点に埃が溜まりやすいので、要注意です。
原因2:ジャック部分
ストラトのジャックプレート(舟形)も、斜め方向から差し込む特異な形状なので、接触不良の原因となりやすい部分です。
原因3:ストリングスガイド
ストラトのヘッドはネックと平行なため、弦に張力がかかりにくい構造となっています。
それを補うために、ストラトには『ストリングスガイド』が取り付けられています。
トレモロアームを使わなければ特に問題はないのですが、アームを使う人は、このストリングスガイドのメンテナンスを怠ると「ギイギイ」といったノイズを発生することがあります。
原因4:スプリング
ストラトはボディーの裏側に数本のスプリングが張ってあり、バックプレートで隠されています。
バックプレートには、弦を交換する際に使用すると思われる穴が6個開いていますが、古い弦を外す際に邪魔になるので、バックプレートを外す人が多くみられます。
バックプレートを外したままにするとスプリングがむき出しになるので、演奏中にスプリングに触れてノイズが出る可能性があります。
ストラトのノイズの対策と解決法
解決法1:ピックアップセレクターのノイズ対策
接点に埃が溜まったり、接点が錆びることによってノイズが発生しますから、1日に1回はピックアップセレクターとボリューム、トーンのポットを動かすように心がけましょう。
それでもガリノイズが出始めたら、パーツを交換したほうが無難です。 その際、セレクタースイッチは、フェンダージャパンのように、モールドされたタイプにしたほうが長持ちします。
ストラトのピックアップ選びならコチラの記事!
解決法2:ジャック部分のノイズ対策
ストラトのジャック部分は斜めになっているので、どうしてもシールドプラグを回しながら抜き差ししてしまいがちです。
すると、次第に止めねじが緩んでくることがあります。
ストラトのジャックプレートは舟形になっているので、ペンチやスパナで締めることができません。
ボックスレンチなど、少々、特殊な工具が必要になりますので、常備しておいたほうが良いと思います。
ピックボーイから、三又になっているボックスレンチが販売されています。
ジャック以外にポットやペグのネジ径もあるので、1本ギターケースへ入れておくと便利です。
解決法3:ストリングスガイドのノイズ対策
ストリングスガイドやナット部分のノイズは、摩擦抵抗を減らせば解決します。
しかし、弦に余分な油分が付着すると、弦が死んでしまうことがあるので、使用する際には楽器用のグリスを使いましょう。
私は、「YAMAHA SG4」という管楽器用のスライドグリスを、爪楊枝の先端にちょこっとだけつけて、ストリングスガイドとナットの弦が通る部分にだけ塗っています。
価格は5~600円程度なので、経済的にも安心です。
又、どうしても弦に油分を付けたくない人は、鉛筆(Bなどの柔らかいもの)の芯を紙の上で擦って、芯の粉を作って塗るのも有効な方法です。 ただし、グリスよりも頻繁にメンテナンスをする必要がありますよ。
解決法4:スプリングのノイズ対策
バックプレートを外して弦が当たる人は、バックプレートのブリッジ部分(バックのザグリの広くなっている部分)だけを切り取ってしまえば良いのです。
金属製のものさしとアクリルカッターと根気があれば、キレイにカットできます。
バックプレートのネジは4本止めになりますが、しっかりと固定できるので心配は要りません。
ただし、プレートの切り口は紙やすりで角を落としておかないと怪我の元ですから注意してください。
又、スプリングの張り具合やブリッジのフローティング状態によっては、ブリッジミュートをした際に、スプリングが共振することがあります。
この場合、バックプレートにスポンジなどを貼り付けてからプレートを固定することで、解決できます。
ストラトキャスターのノイズ対策と原因まとめ
ストラトには、シングルコイルのシャープな音質と大胆なアーミングという強力な武器がある反面、レスポールと比較してノイズに弱い楽器であることは否定できません。
ですから、どんなにノイズ対策を施しても、ある程度のノイズを覚悟して付き合っていくのが、ストラトユーザーの宿命なのです。
しかし、ギターから音が出なければ、どんなノイジーな楽器でもノイズは出ないわけですから、究極のノイズ対策は、
【弾き終わったらボリュームを絞る!】
これに尽きると思います。
幸い、ストラトのボリュームはピッキングポジションでも簡単に届きますから、「弾いたら絞る」の練習もしておくことをおすすめします。
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